ブックタイトル月刊 マテリアルフロー 2013年2月号 No.635_立ち読み

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概要

月刊 マテリアルフロー 2013年2月号 No.635_立ち読み

特集/グリーン物流実践事例物流環境大賞タンデム・ハイブリッド方式スーパーエコシップ(SES)「興山丸」の開発・建造宇部興産海運株式会社独立行政法人海上技術安全研究所独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構改正省エネ法の施行に伴い,海運業では航行支援によるソフト,船体・機関などハードの両面で省エネ対策が不可欠となった。加えてベテラン船員の確保が困難となり,操船サポートのシステム構築が課題となっている。そこで宇部興産海運㈱では内航貨物船としては革新的なハイブリッド方式を採用し,省エネ船舶「興山丸」を開発,建造した。操船が複雑になるのではとの懸念もあったが,操船統合システム開発・採用により,一つのハンドルでの操作を実現。在来船と比較し,トンマイル当たりCO2排出量を20%以上低減,最適航路・船速の運航支援マネジメントシステム(ECoRO)による約4%の省エネも実現した。商船で前例がない電気推進方式環境大賞を受賞した本プロジェクトは宇部興産海運㈱,独立行政法人海上技術安全研究所,独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下,鉄道・運輸機構)の3者が推進したものだ。海運特有の運送契約により,荷主は宇部三菱セメント,船主は山機運輸と鉄道・運輸機構,実際のオペレーションは宇部興産海運となっている。興山丸は20,000DWT級の内航セメント船で就航は2010年9月。総トン数14,902t,載貨重量トン数22,053t,全長160.9m,垂線間長153.7m,型巾27.8mの大型船だ。航海速力は約13.0ノットで主機関のメーカーはJFEエンジニアリング,主・補発電原動機はヤンマー製である。セメント船に珍しい明るいブルー基調の塗装を施した興山丸は,スーパーエコシップ(SES)のカテゴリーに属する。SESとは新技術の電気推進システム採用により運航効率向上,環境負荷低減等を実現する次世代船舶だ。過去にもSESは第8回物流環境大賞で「物流環境負荷軽減技術開発賞」,第10回には「物流環境特別賞」などを受賞しているが,大賞受賞は今回が初となる。プロジェクトの事務局を務めた鉄道・運輸機構共有船舶建造支援部の大島寛部長は,「これまでに開発されてきたSESに関わる新技術を活用し,環境に優しく経済的な船舶の建造を支援することにより,物流効率化と地球温暖化対策等の環境負荷低減を促進し,内航海運の活性化を図ることを目的としました」と話す。SESは人にも地球にも優しいことを目指す。海運分野で地球環境の保全を実現するため,在来船より経済性・運航性能が高く職場環境も良い船の供給が不可欠として,2001年より国土交通省が研究開発を推進してきた。船舶用ディーゼルエンジンで発電機を駆動する電気推進システムの採用でNOx,SOx排出量を大幅に削減し,船上での保守作業の負担軽減とともに,振動や騒音の低減も可能となる。現在では23隻のSESが内航船として活躍中だが,興山丸ではポッド推進器を採用し,操船性能をさらに向上,離着桟時の利便性と安全性の向上を実現している。「電気推進方式の船はこれまでもありましたが,商船では前例がないもの」と大島部長は指摘する。静かで震動のない快適さを求める豪華客船,氷を割る際に自重で前後進を繰り返す南極観測船,音波測定のため静かさが求められる海洋調査船など16 2013・2